高次脳機能障害研修会に参加してきました。
2014.10.29 |
この日曜日に山口市において山口県リハビリテーション講習会が開催されました。
高次脳機能障害に関わる当事者,家族会,医療機関の方などが参加されており,損害賠償請求などの法律的な側面についてはテーマではありませんが,より深く高次脳機能障害を理解するために,私と事務局長D,事務局Oの3名で参加してきました。
今回のテーマは「地域生活を支えるための工夫や課題」です。
高次脳機能障害という言葉や内容については,徐々に認知度が高まってきていますが,市町村の段階まで来ると十分に浸透していないこともあり,急性期における診療の内容如何により,以後の効果的な治療に影響が生じてしまうことがあります。
法律的な面でも,急性期における画像(特にMRI)がないことや意識障害に関する資料(JCS,GCS)がないことにより,高次脳機能障害としての適切な後遺障害等級が獲得できず,十分な賠償請求ができないという深刻な問題を生じています。
この講習会では,まず,岐阜医療科学大学阿部順子教授により,高次脳機能障害の概要についての説明ののち,現在愛知県において研究事業としてなされている新たな高次脳機能障害の方への支援手法のご紹介がありました。
生活訓練事業の一環として,より効果を上げるために生活する場での訓練を行う訪問型生活訓練(生活版ジョブコーチ)についての紹介です。いわゆるADL(日常生活動作)の習得には,通所や宿泊による施設による訓練よりも実際にご本人が生活されている場所での訓練が効果的ですし,近隣との環境調整や社会資源の活用にも適しています。実際の生活訓練の様子を撮影したDVDの視聴もあり,支援の内容についても詳細にご紹介いただきました。
山口県において,この訪問型生活訓練を行うについては,多極分散の特質から,司令塔となるコーディネーターの配置や訪問支援員のスキルアップや高次脳機能障害への理解の標準化,コストの分散などが課題となりそうですが,ご本人にも一番の心強い味方となるご家族の支援を最大限に受けられる手法でもあり,大変有意義な手法ではないかと思います。
午後はまず,キャスター・ジャーナリストの松本方哉さんによる講演がなされました。奥様が突然倒れられ,クモ膜下出血など2度の大病を患われ,その介護のご経験などについてお話をいただきました。病院のたらいまわしに遭われたことのお話もあり,急性期における各地域での受け入れのあり方,介護の主たる担い手であるご家族の負担を地域で分かち合う方法など,高次脳機能障害への理解の促進と並行して実際に手を差し伸べることの大切さを感じました。
その後は,高次脳機能障害をお持ちのご本人やご家族の方,山口県立こころの医療センター兼行院長を中心とした座談会が開かれました。ご本人から,家族や支援者へありがとうと言いたいとのお話が出たときは,会場の誰もが思わず拍手をしてしまうほど会場の全員が感動し,ご家族の方によるお話では,高次脳機能障害と気付くまで,就労までと就労してなど様々な段階でのご苦労を伺い,地域行政や我々地域に所在する法律家としてやるべきことの多さを改めて認識しました。少しでも多くの専門家がご本人やご家族と触れ合える環境を増やすことで,高次脳機能障害の存在に気づきやすくし,適切な医療・介護を中心に,法的な側面でのバックアップを図れるよう,専門家同士の連携,専門家による地域住民への高次脳機能障害についての周知の必要性を感じた次第です。
山口県立こころの医療センターの皆さまをはじめこの度の講習会開催に関与された関係者の皆さまや,当講習会に私たち事務所の構成員をご招待いただいたご家族の方,家族会の方々に改めて感謝いたします。